珍しい事例

人名漢字表の改正と名前の変更許可

少し珍しい事例を簡単に紹介しよう思います。

事例は、出生当時に命名しようとした名前が、当時の人名漢字表にはない漢字であったので、当用漢字に文字を変更して出生届をしました。その後、人名漢字表の改正で当初命名しようとした漢字が使えるようになったので、これを理由に変更許可の申立をしました。

裁判所の判断

高知家庭裁判所の判断

当初、家庭裁判所は、事後的に人名用漢字として認められるようになったからといって、当初の漢字に変更する事は「正当な事由」に当たらないと判断して、申立を却下しました

高松高等裁判所の判断

これに対して、申立人が不服を申立ました。

高松高等裁判所は、

出生届当時、常用漢字表及び人名用漢字別表になかつた漢字が、その後の改正により新たに漢字の使用が許されることになつたということだけでは、直ちに名の変更について正当な事由があるとはいえない

と前置きをしたうえで、

変更を必要とする事由の存在という積極的要件のある場合のみ認められるべきであると解すべきではなく、名の変更を認めても個人の同一性の認識に混乱を生ずるおそれはないという消極的要件を以つて足りる

と判断して、家庭裁判所の判断を取り消して、名前の変更を許可しました。

とは、言ったものの

この事例に関しては、変更許可を求める人が生後間もない乳児であって、当然人付き合いが広範囲に及ぶわけでもなく、一般社会に混乱を生じる惧れがないだろうという、価値判断があったと思います。

もし、名前の変更の許可を求める人が成人をしていて、すでに変更前の名前で広く社会に認知されているような場合は、変更後の混乱を考えると許可されないこともあるのではないかと思います。