同じ理由での改名の申立

家の模型

一度、改名の申立をしたところ、正当な理由がないと家庭裁判所に不許可とされてしまうことはあると思います。

しかし、どうしても名前を変更したいというご希望は、理解できます。

では、同じ理由で何度も名の変更の許可の申立をできるのかどうかを、お話ししていこうと思います。

東京家庭裁判所昭和40年の事例

Aさんは、長年Bという通称を使用しているとして、昭和37年に東京家庭裁判所に改名の申立をして、10月2日にBと改名することの許可を得て、同月11日に改名の戸籍届を区役所に提出しました。

ところがこのBさん、その月の16日(つまり改名の戸籍届の5日後)に、昭和29年からCという名前を使っているので、Cに改名したいと家庭裁判所改名の申立をしました。

この改名の申立は、通称名を使用していることがわかる資料がないので、家庭裁判所は正当な理由がないと申立を却下しました。

しかし、Bさんはあきらめずに昭和39年12月までの約2年間に、さらに5回、同じ理由で東京家庭裁判所に改名の申立をしましたが、いずれも不許可(1件は取り下げ)となりました。

不許可の理由として、通称を理由としての改名というには、証拠資料が少なく、昭和37年10月16日の申立以降の申立も、前の申立以上の証拠資料が追加されるわけでもないのに頻繁に改名の申立をするのは、申立権の濫用であるとしました。

またこれらとは別に、Bさんは、昭和38年の4月と10月にそれぞれ通称の使用以外の理由でCという名前に改名したいと申立をしましたが、これも改名の正当な理由がないと家庭裁判所は改名の許可をしませんでした。

この二つの申立についても、新しい証拠資料を提出することなく、裁判所に理由を口頭で説明しているだけだったそうです。

そして昭和40年、Bさんはまた、東京家庭裁判所に改名の申立をしたそうです。

昭和40年家庭裁判所の判断

この改名の申立について、家庭裁判所は以下のとおり判断しました

改名許可事件において、名を変更するに足る正当な事由がないとして申立却下の審判がなされた場合には、申立人はその審判に対し即時抗告をなしうるのであるが、即時抗告期間中に即時抗告がなされず、または即時抗告がなされ、それが不適法ないし理由がないとして却下されて、該申立却下の審判が確定した場合においても、該申立却下の審判はいわゆる既判力を有しないため、申立人は再度同一の申立をなしうるものと解せられる。

しかしながら、申立人が申立却下の審判に対し不服があるのに、即時抗告をなさず申立却下の審判が確定した場合にその確定した時期に近接し、または即時抗告期間中で未だ申立却下の審判が確定しない間に、或いは未だ許可、却下いずれの審判もなされない間に、前の申立におけると同一の事由で、しかもその事由を立証するに足る新たな証拠資料を補充することもなく、再度同一の申立をなすが如きことはいずれも申立権の濫用として許されないものと解するのが相当である。

つまり、一度不許可された改名の申立を、不服申立をすることなく、何の事情の変化もないまま繰り返し申立てることは、申立をする権利の濫用なので許さないということです。

改名手続きの不服申立

まず、改名の申立の不服申立とはなんでしょうか。

改名の申立は、裁判所では、「名の変更許可申立」といいます。この名の変更許可申立を許可したことにはついては、誰も不服を言えません。

しかし、許可をしないことについては、申立をした人が、不許可の連絡を受けた時から2週間以内に、不服の申立をすることができます。この不服申立を特別抗告といいます。

不服申立をうけると、不許可とした裁判所がまず審査します。明らかに家庭裁判所に間違いがあった場合は、その家庭裁判所が結論を変えることになります。

家庭裁判所に明らかな間違いがない場合は、特別抗告の手続きは高等裁判所に移され、高等裁判所で再度審査して、あらためて許可又は不許可を決定します。

ですので、前述の昭和40年の場合、何度も同じ申立をするのではなく、不服申立をして、高等裁判所で再審査を求めるべきだと考えられます。

繰り返し申立をすることについて

即時抗告をなさず申立却下の審判が確定した場合にその確定した時期に近接し、(中略)、前の申立におけると同一の事由で、しかもその事由を立証するに足る新たな証拠資料を補充することもなく、再度同一の申立をなす

この部分は、特別抗告をしないで不許可の審判確定した直後や、不許可の審判が確定する前、または前の申立の結果が出る前に、同じ理由、同じ証拠資料で繰り返し申立をしたということを言っています。

では、どれくらい期間が、前の申立から経過していれば、問題にならないのでしょうか?

私個人としては、期間の問題ではなく、別の改名の理由ができたり、新しい証拠資料を用意できるかがポイントだと考えています。

つまり、前の申立の前後から、精神的な苦痛を理由に申立をした人が通称の使用を理由に申立をすることになったり、新しく通称の使用がわかる資料を十分に用意できたり、といった場合だと考えています。

申立権の濫用

最後に「申立権の濫用」についてですが、そもそも誰にでも申立をする権利はありますが、申立権だけではなく他の権利であっても濫用することは許されません。

前述の昭和40年の場合は、なんども繰り返し、同じ理由で申立をすることが、申立権の濫用だと判断していますが、例えば、この申立をした人が、4回しか申立しなかった場合は、どうなんでしょうか。

私は、単純に申立の回数や前の申立からの時間経過とは関係なく、その人が申立をする理由や、前の申立からの経緯などを総合的に判断するべきではないかと思います。